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ウクライナについて学ぼう

    このページでは、情報検索ガイドのうち「図書・雑誌の探し方」「雑誌の記事・論文の探し方」「事典・辞書の探し方・使い方」の説明を実践する事例として、ウクライナについて学ぶための情報リソースの探し方を検討します。日本語のリソースを中心に説明しますが、英語、ロシア語、ウクライナ語のリソースは日本語のリソースよりも多くありそうですので、これらの言語で書かれた文献を読める方は、ここに書かれていることを応用して、より多くのリソースにアクセスしてください。

    この記事の原稿は2022年3月下旬から4月上旬に書かれました。この間にも、ウクライナでは、多くの人が理不尽な砲撃や爆撃に耐え、瓦礫に埋もれ、路上に斃れ、故郷を追われ、銃を手に戦いに追い込まれています。こんな戦争が一日も早く終わることを願ってやみません。

    なお、文中の地名や人名の表記は、紹介している文献に書かれている表記に従いました。

  1. 「ウクライナ」関係の文献を探す
  2. 2022年3月1日から29日までで、本学の蔵書検索システムで検索語として入力されたキーワードのうち「ウクライナ」は12番目の頻度でした。「ウクライナ」と入力して表示される件数は66件。1件につき複数冊の蔵書がありますので、所在不明の4件を含め166冊の蔵書が検索リストに表示されます。そのうち27冊が貸出中(2022年3月29日現在)です。新聞では連日、ウクライナ情勢が報じられていますが、こうした中で、利用者のうちの少なくない方が、遠い国での出来事に心を痛め、この国のことに関心をもって学ぼうとされていることがわかりました。

    蔵書を探す

    前述の通り、本学の蔵書検索システムで「ウクライナ」と入力して得られる検索結果は66件です(この章の説明で示す数字はいずれも2022年3月29日または30日現在です)。このうち書名に「ウクライナ」を含むものが47件、件名に含むものが31件です。

    この数字はけっして大きくはありません。同じように「ハンガリー」と入力すると192件、「フィンランド」は203件、「ポーランド」は295件がヒットします。理由は推測でしかありませんが、ハンガリーやポーランドやフィンランドは、中世からその地域を治める「国」があり、民族としてのアイデンティティが確立され、それぞれ独自の文学や思想が発展したのに対して、ウクライナはポーランドの一部であった時期が長く、近代以降はロシアやソヴィエトのひとつの地方として、民族としてのアイデンティティの確立が遅れたからではないかと思われます。ウクライナの歴史はポーランド史やロシア史に埋もれ、ウクライナ出身の作家や音楽家の作品もロシア文学やロシア音楽に埋もれているのではないかと思われます。ただ「ウクライナ」とキーワードを入力して検索するだけでなく、ウクライナのことについてもう少し調べて、関連する別のキーワードを入力して検索する必要がありそうです。

    一方、英語で「Ukraine」と入力して得られる検索結果は335件です。英語の資料が164件、ロシア語が143件、ウクライナ語が15件、日本語が5件などとなっています(※1)。これほどの差が出るのは、目録の取り方などの違いも多少影響しているかもしれませんが、本質的には、日本語での書籍を出版したり読んだりするコミュニティと、英語やロシア語で出版や読書をするコミュニティとの、ウクライナに対する関心の高さの違いと言わざるを得ません。

    ※1 蔵書管理システムに入力されているタイトルが日本語と英語で併記されている場合など。

    電子書籍を探す

    本学が購入し学内で閲覧可能な電子書籍を検索できる電子書籍検索システム"で、タイトル(TI)またはサブジェクト語(SU)に「ウクライナ」が含まれるものは、関連語を適用し、同等のサブジェクトを提供して、たった1件。「Ukraine」だと138件で、そのうち130件は英語の書籍でした。Maruzen eBook Libraryで、本学が購入していない電子書籍も含めて、書名に「ウクライナ」を含むものを検索した結果は4件。本文のどこかに「ウクライナ」を含むものは998件でした。読みたいと思う書籍が購入されていなくても、収書基準に適うものがあれば、購入希望を出していただければと思います。洋書が中心のProQuest EBook Centralで「図書館で所蔵または購読中」にチェックを入れて検索すると、本学が購入した電子書籍のほかに、ProQuest EBook Central Academic Completeというサブスクリプション契約で利用可能な約14万件の電子書籍も含めて検索することができます。キーワードとフルテキストを対象に「Ukraine」を含むものを検索すると、27,911件という膨大な数の電子書籍がヒットします。タイトルだけで検索すると、検索結果は98件でした。

    論文その他の文献をまとめて探す

    本学図書館の蔵書、本学がアクセス権を購入した電子書籍や電子ジャーナルに掲載されている論文などの電子リソース、入力されたキーワードの意味、関連する新聞記事などをまとめて検索することができる「まとめて検索」で、「ウクライナ」を検索すると、7,991件のコンテンツが検索結果に表示されます(この章の説明で示す数字はいずれも2022年3月31日現在です)。検索の際、「関連語を適用」「記事全文も検索」「同等のサブジェクトを適用」にそれぞれチェックを入れていますので、かなり多めに検索されています。検索結果画面の右の方を見ると、国立国会図書館が作成するNDLシソーラスが適用され、同義語である「Ukraine」についても検索されていることがわかります。本学の設定では、検索結果一覧のいちばん上に「RESEARCH STARTER」「JapanKnowledge Lib」という事典・辞書データベースからの項目説明が表示されるようになっています。

    左側に絞り込み条件(「ファセット」といいます)が表示されていますので、そのなかの「フルテキストあり」をチェックして、すぐに本文が読めるものに絞り込むと、検索結果は1,575件になります。内訳は以下の通りです。

    雑誌 逐次刊行物、ジャーナル記事、ジャーナル 396
    学術専門誌 学術ジャーナル、査読誌 362
    電子リソース コンピューターファイル、コンピューター、電子リソース、電子書籍、およびWebサイト 264
    一次資料文献 法文献、一次資料、政府文献一次資料 138
    書籍 書籍、年鑑、レファレンスブック、書籍コレクション 96
    電子書籍 電子書籍 71
    会議用書類 会議資料、会議録、シンポジウム 44
    学位論文 (博士/修士) 博士論文、修士論文 40
    レポート 国別レポート、市場調査レポート、レポート、教育レポート、SWOT分析、業界レポート、業界プロファイル、および灰色文献 34

    このように「まとめて検索」ではさまざまな情報リソースから情報を収集することができますが、検索結果が数百件を超えると、1件ずつ吟味していくことはできません。ウクライナの何について調べたいのかを考えて、例えば「ウクライナ AND 文学」「ウクライナ AND アイデンティティ」など、キーワードを加えて絞り込む必要がありそうです。

  3. 事典・辞書で調べる
  4. 事典や辞書は、概念を言葉にしたものや言葉そのものについて、別の言葉で説明するものです。「ウクライナ」の説明の中に、それを理解するうえで重要な言葉がいくつも用いられています。これらの関連する事項や言葉を理解することは、「ウクライナ」をより深く、複層的に理解することにつながります。

    平凡社の『世界大百科事典』

    平凡社の『世界大百科事典』は代表的な百科事典で、本学では、平井嘉一郎記念図書館に、2009年に刊行された「2009年 改訂新版」が所蔵されています。これが印刷されて出版された最新版です。『世界大百科事典』は「大項目主義」を採用しており、項目の数が少ない代わりにひとつひとつの項目について詳しい説明がなされています。「ウクライナ」については3巻215ページから3ページ以上に渡って、自然、住民、産業、歴史について説明されており、特に歴史については、「古代から中世へ」「民族意識の形成」「ウクライナのルネサンス」「内戦と社会主義政権の確立」「ウクライナ化への道」「ペレストロイカから独立へ」という小見出しを付けて詳細な説明をしています。「旧ソ連以外に住んでいるウクライナ人は300万以上で、アメリカとカナダおよびポーランドにその大部分がいる」「ウクライナ在住のロシア人1100万余は、おもにウクライナ東部と南部に住んでいる。西部や中部の諸州ではロシア系住民は10%以下だが、東部と南部では10~50%を占め、特にクリミア自治共和国では70%に及ぶ。このような住民構成が、独立後のウクライナとロシア連邦との関係、ウクライナの政策を考えるうえで、前提条件となる」など、その後に生起する事態を先読みするかのような記述も見られます。

    この説明の中から「キエフ・ロシア」「ガーリチ・ボルイニ公国」「サポロージエ コサック」「ウクライナ コサック」「フメリニツキー(1595-1657)」「ペレヤスラフ協定」「ヘトマン国家」「スロビツカ・ウクライナ」「中央ラーダ政府」「ビンニチェンコ(1880-1951)」「ペトリューラ(1879-1926)」「ウクライナ・パルチザン」など、ウクライナを知るうえで重要な用語をピックアップすることができます。

    現在、『世界大百科事典』は電子百科事典となり、Japan Knowledgeで他の事典・辞書と横断検索できるようになっています。2022年4月現在、「ウクライナ」で調べると、約11,000文字の説明と、以下の「索引語」が呈示されます(表出順)。

    Ukraina / ウクライナ・ソビエト社会主義共和国 / Ukrains'ka / Radyans'ka / Sotsialistichna / Respublika / ハリコフ / オデッサ / 小ロシア / クリミア半島 / チェルノーゼム / クリボイ・ログ地方 / ドネツ炭田 / ドンバス / ウクライナ人 / ルーシ・ハーン国 / キエフ・ロシア / キエフ・ルーシ / ガーリチ・ボルイニ公国 / ガリツィア ルブリン合同 / レーチ・ポスポリタ / ウクライナ人コサック / カーファ フェオドシア / ビシネベツキー,D.I. / ザポロージエ・コサック / サハイダーチヌイ,P.K. / モヒラ・アカデミー / モヒラ,P.S. / ペレヤスラフ協定 / アンドルソボの休戦 / 左岸ウクライナ / ヘトマン / ヘトマンシチナ / ゲトマン マゼパ,I.S. / ポルタワの戦 / エカチェリナ2世 / 小ロシア / 右岸ウクライナ / ハイダマキ運動 / スロビツカ・ウクライナ / 自由なウクライナ / マロロシア / ノボロシア / コトリャレフスキー,I. / エネイダ シェフチェンコ,T.G. / クリシ,P. / コストマーロフ,N.I. / バルーエフ,P.A. / エムス法 / ドラホマーノフ,M.P. / フランコ,I.Ya. / ウクライナ急進党 / フルシェフスキー,M.S. / ウクライナ革命党 / ビンニチェンコ,V.K. / ペトリューラ,S.V. / ウクライナ中央ラーダ / ディレクトーリア / マフノ,N.I. / デニキン,A.I. / ウクライナ共産党 / ウクライナ社会主義ソビエト共和国 / シュムスキー,O. / スクリプニク,M. / ウクライナ独立正教会 / ウクライナ民族組織 / OUN / ウクライナ・パルチザン / UPA(ウクライナ) / ウクライナ・カトリック教会 / ウクライナ共産党 / メリニコフ,L.G. / キリチェンコ,O.I. / シェレスト,P.Yu. / ウクライナ・ヘルシンキ・グループ / シチェルビツキー,V.V.

    『ブリタニカ国際大百科事典』

    『ブリタニカ国際大百科事典』は「小項目主義」を採用しており、ひとつひとつの項目の説明は短い代わりに多くの項目で調べられるようになっています。1991年10月に発行された「第2版改訂」が最新版で、それ以降、印刷物としての改訂はされていません。ウクライナは1991年8月24日に独立を宣言し、12月1日の国民投票でこれを承認していますが、この事典での説明にはそれが反映されておらず「ウクライナ」は「ソ連を構成する15共和国の一つ」と説明されています。

    現在、『ブリタニカ国際大百科事典』の電子版が提供されていますが、本学では残念ながら利用できません。

    小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』

    小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』も、現在、電子百科事典としてJapan Knowledgeに収録されています。「ウクライナ」を調べると、約9,000文字の説明と、次の「関連項目」が呈示されます。

    ウクライナ語 / エカチェリーナ(2世) / オデッサ / ガリツィア / カルパティア山脈 / キエフ / キエフ大公国 / GUAM / クチマ / クリボイ・ログ鉄山 / クリミア半島 / クレメンチュグ / ケルチ / コサック / 黒海 / ザカフカス / ザカルパトスカヤ / CIS / シェフチェンコ / セバストポリ / ソ連崩壊と東欧の歴史的変革 / 大北方戦争 / チェルニゴフ / チェルノブイリ原子力発電所事故 / ドニエストル川 / ドニエプル川 / ドネツ丘陵 / ドネツ炭田 / トルクメニスタン / ハリコフ / ピョートル(1世) / ブコビナ / フメリニツキー / プリピャチ川 / ベッサラビア / ベラルーシ / ポーランド・ソビエト戦争 / ポルタバの戦い / ポレシエ / マリウポリ / ユシチェンコ / リボフ / ルハンスク / 瀝青炭

    また、参考文献として、中井和夫著『ウクライナ・ナショナリズム――独立のディレンマ』(1998・東京大学出版会)伊東孝之・井内敏夫・中井和夫編『世界各国史20 ポーランド・ウクライナ・バルト史』新版(1998・山川出版社)、東京農大ウクライナ100の素顔編集委員会編『ウクライナ100の素顔――もうひとつのガイドブック』(2005・東京農大出版会/本学所蔵なし)、黒川祐次著『物語 ウクライナの歴史――ヨーロッパ最後の大国』(中公新書)が紹介されています。

  5. ウクライナの歴史について調べる
  6. いまウクライナで起きていることを理解するには「ウクライナ人」という民族を理解しなければならないでしょう。民族とは「同じ文化を共有し、生活様態を一にする人間集団。起源・文化的伝統・歴史をともにすると信ずることから強い連帯感をもつ。形質を主とする人種とは別」と定義されます(※1)。したがって、ウクライナ人が共有している文化、生活様式や、ウクライナ人が信じている起源、文化的伝統、歴史とは何かを知ることは、とても大切なことだと思われます。ここではまず「歴史」について調べるための資料とその入手方法について説明します。

    ※1 "みん‐ぞく【民族】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-03-31)

    ウクライナの歴史についての蔵書を探す

    ウクライナの歴史を知るために最初にお勧めするのは次の図書です。

    1 黒川祐次(1944-). (2002). 物語ウクライナの歴史. ヨーロッパ最後の大国. 中央公論新社.

    著者紹介によると、著者は、外交官で、駐ウクライナ大使を経験し、2004年12月のウクライナ大統領選挙の際には日本監視団の団長を務めておられる方です。「ウクライナ通」といってよいのではないでしょうか。ウクライナの歴史について、専門家ではない一般の読者向けに丁寧な記述をされているだけでなく、歴史上の人物に関わるさまざまなトピックや、ウクライナに関係するさまざまな分野の著名人とその作品や業績の紹介など、ウクライナを知るうえで必要なキーワードがいくつも散りばめられています。本学図書館には5冊の蔵書がありますが、2022年3月29日現在、いずれも貸出中で、次の予約も入っています。書店でも相当な売れ行きのようです(※1)。

    この他に、本学図書館では、以下の蔵書が利用できます。必ずしも「ウクライナ」というキーワードを入れて見つかる資料ばかりではありません。事典・辞書の説明や、先に紹介した入門書から、さまざまなキーワードを入力して検索しないと見つからない書籍もいっしょに紹介しています。これら13冊は、現在、書店では入手できません(※2)。

    2 雪嶋宏一(1955-). (2008). スキタイ騎馬遊牧国家の歴史と考古. 雄山閣.
    Ⅵ章「第二スキタイ国家:黒海北岸草原の支配」で、現在のウクライナ国内の遺跡や、被支配階級と思われる「農民スキタイ」について言及されています。
    3 熊野聡(1940-), 角谷英則, Clarke, H., & Ambrosiani, B. (2001). ヴァイキングと都市. 東海大学出版会.
    第6章「スラヴ・バルト地域の都市」で、キエフを含むドニエプル川沿いの遺跡に言及しています。
    4 荒川明久(1952-), & Larsson, M. G.-). (2008). ヴァリャーギ. ビザンツの北欧人親衛隊. 国際語学社.
    日本では一般に「ヴァイキング」と呼ばれる北欧人は、スラヴ語では「ヴァリャーギ」。スカンジナビア半島からバルト海を超え、ドニエプル川を下ってビザンツ帝国まで進出しました。
    5 星川淳(1952-), 横堀冨佐子, & Weatherford, J. M. (2006). パックス・モンゴリカ. チンギス・ハンがつくった新世界. 日本放送出版協会.
    第六章「ヨーロッパの発見と征服」で、ドニエプル川沿岸の都市国家との戦いと征服に言及。タイトルの「パックス・モンゴリカ」は、モンゴル人の支配を受け入れることによる平和を意味しています。
    6 中井和夫(1948-), 井内敏夫, & 伊東孝之(1941-). (2002). ポーランド・ウクライナ・バルト史 (新版, 2刷). 山川出版社.
    ポーランド、ウクライナ、バルト諸国にベラルーシを加えた地域をひとつの地域と捉えて、国家と民族の成立過程を解説しています。
    7 阿部 重雄. (1987). コサック. 教育社.
    3「ウクライナ併合」で、ルブリン合同(1569年)でウクライナがポーランド領となってから、ポーランド貴族による苛烈な支配とフメルニツキ(1595頃-1657 ※3)による自治権拡大のための戦い、その後のロシアへの統合などについて説明されています。
    8 早坂 真理. (1994). ウクライナ. 歴史の復元を模索する. リブロポート.
    国家として歴史に蘇ったウクライナ。しかし、中世末以来ポーランドに、ツァーリズム・ロシアに、ハプスブルグに分割されソヴィエトに支配されてきたこの地域は、固有の歴史を復元できるだろうか。アイデンティティを模索する人々の姿を東欧史家が描いた価値ある旅行記。(by openBD)
    9 白石治朗(1936-), & Conquest, R. (2007). 悲しみの収穫. ウクライナ大飢饉 : スターリンの農業集団化と飢饉テロ. 恵雅堂出版.
    時を隔て、いま甦る20世紀の悪夢。餓死者700万人以上、1933年のヨーロッパの穀倉地帯、ウクライナを襲った20世紀最大の悲劇。スターリンのウクライナ農民大虐殺—中国、カンボジア、北朝鮮へと続く飢饉テロの原型—の全貌を初めて世界に知らしめ、ソ連崩壊を加速させたロバート・コンクエストの歴史的名著初邦訳!(by openBD)
    10 千葉茂樹(1959-), & Dougan, A. (2004). ディナモ. ナチスに消されたフットボーラー. 晶文社.
    1942年、ドイツ占領下のウクライナ。パン工場で強制労働をさせられていた名門クラブ、ディナモ・キエフの選手とドイツ軍兵士のメンバーとのサッカー対戦が行われた。アーリア人の肉体的、精神的、優位性を信じる、ドイツにとっては、負けるはずのないチーム。ディナモの選手にとっては、勝ったら、命の保障はない。運命の日、ディナモは5‐1と大勝。三日後の再戦でも、5‐3の勝利。その後、選手たちは強制収容所へ。戦後、生きて帰ってきたものは少ない。ソ連のプロパガンダによって、全員が射殺されたと長らく信じられていた伝説の試合の真実を、丹念に検証した、歴史スポーツ・ノンフィクション。(by openBD)
    11 中井和夫(1948-). (1988). ソヴェト民族政策史. ウクライナ1917~1945. 御茶の水書房.
    12 西谷 公明. (1994). 通貨誕生. ウクライナ独立を賭けた闘い. 都市出版
    ソ連邦解体でロシアと旧連邦構成国との闘いが始まった。自らの通貨すら持たない国に、どのようにして市場経済をつくるのか、ウクライナ独立の命運を握る経済改革管理委員会に身を置き、紙幣印刷という国造りのスタートから立ち会った著者の渾身のドキュメント。(by openBD)
    13 宇山智彦(1967-), 北海道大学スラブ研究センター, 藤森信吉, & 前田弘毅(1971-). (2006). 「民主化革命」とは何だったのか. グルジア、ウクライナ、クルグズスタン. 北海道大学スラブ研究センター.
    14 中井和夫(1948-). (1998). ウクライナ・ナショナリズム. 独立のディレンマ. 東京大学出版会.
    ウクライナは,ロシアに次ぐ人口と経済的重要度をもつ新しい独立国である.本書は,ウクライナ・ナショナリズムの歴史的背景,第二次世界大戦からペレストロイカまでの運動の軌跡と独立のプロセスを描き出し,独立後のさまざまなディレンマを明らかにする.(by openBD)

    ※1 三省堂書店全店について2022年3月14日から20日までの新書部門の販売部数を調べたところでは、『物語 ウクライナの歴史 ヨーロッパ最後の大国』がベスト2でした(朝日新聞 2022年3月26日 朝刊 25ページ 東京本社)。
    ※2 2022年3月29日現在、大学生協オンラインでは取り寄せができません。
    ※3 平凡社『世界大百科事典』に記載のある「フメリニツキー(1595-1657)」と同一人物です。カタカナ表記と生没年は、ここで紹介している文献に書かれている内容に拠ります。

    学術論文を探す

    ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから、新聞は連日、ウクライナのことを伝えていますし、ビジネス誌などにもウクライナについて述べた記事が多く見られるようになりました。「識者」と呼ばれる人がたびたびテレビにも出演して、一般人にはわかりにくい遠い国での出来事についてわかりやすく解説してくれます。しかし、戦争が始まってからの報道は、分断された世界のどちらかの見解に偏りがちで、そこからその分断の原因を知ることが難しいことも、ひとつの側面として理解しておく必要があります。戦争が始まる前、ウクライナはどのような立ち位置で世界からどのように見られ学術的にどのように扱われていたのでしょうか。

    「論文・記事検索」画面で「ウクライナ 歴史」と入力して得られた検索結果を、左側のファセットで「学術文献(査読論文など)」に絞り込んでみたところ、34件の検索結果を得られました(2022年4月5日現在)。「関連度順」に並べて上位に表示される文献のうち、以下のものについては、学内ネットワークに接続したパソコンなどからすぐに全文にアクセスできます。

    1 保坂 三四郎. (2016). ウクライナにおける地域ファクターと歴史観 : 「ユーロマイダン革命」以後の社会調査データをもとに. ロシア・東欧研究 : ロシア・東欧学会年報 = Russian and East European Studies : Annals of the Japanese Association for Russian and East European Studies, 45, 119–134.
    2 赤尾 光春. (2003). ウマン巡礼の歴史--ウクライナにおけるユダヤ人の聖地とその変遷. スラヴ研究 = Slavic Studies, 50, 65–106.
    3 柳沢 秀一. (1997). ヴァシーリ・ヴォエチコ,オクサーナ・ハンジャ,ボリス・ザハルチューク『ウクライナの国境--歴史的回想と現状』. 国際学論集, 131–135.
    4 下斗米 伸夫. 「空白」と「記憶」 : ウクライナ飢饉と歴史認識. 国際問題 = International affairs / 『国際問題』編集委員会 編. 2009;(580):1-3. Accessed April 5, 2022. https://search.ebscohost.com/login.aspx?direct=true&db=edsjpi&AN=R000000004-I024005739-00&lang=ja&site=eds-live
    5 松村 岳志. (1996). 右岸ウクライナにおける領地台帳改革(1847-48年)の歴史的意義. 社会経済史学 = Socio-Economic History / 社会経済史学会 編, 61(6), 741–768.

    また、次の論文は、掲載されているジャーナルが本学に所蔵されています。

    1 タラネツ セルゲイ, & 塚田 力 訳. (2021). 古儀式派の歴史と文化の調査に関するウクライナ・日本の協力. Север, 37, 179–185.
    2 保坂 三四郎. (2016). ウクライナにおける地域ファクターと歴史観 : 「ユーロマイダン革命」以後の社会調査データをもとに. ロシア・東欧研究 : ロシア・東欧学会年報 = Russian and East European Studies : Annals of the Japanese Association for Russian and East European Studies, 45, 119–134.
    3 下斗米 伸夫. (2014). 現代のウクライナ問題の理解を深める歴史書[『対比列伝 ヒトラーとスターリン』全3巻 アラン・ブロック(鈴木主税訳、草思社)]. エコノミスト, 92(22), 80–81. なお、鈴木主税(1934-), & Bullock, A. (2003). ヒトラーとスターリン. 対比列伝. 草思社.についても本学図書館に所蔵されています。
    4 赤尾 光春. (2003). ウマン巡礼の歴史--ウクライナにおけるユダヤ人の聖地とその変遷. スラヴ研究 = Slavic Studies, 50, 65–106.
    5 割田 聖史. (2000). 「地域」の歴史を叙述すること--『ポーランド・ウクライナ・バルト史』を中心に. 東欧史研究 = The Journal of East European Studies, 64–70. なお、中井和夫(1948-), 井内敏夫, & 伊東孝之(1941-). (2002). ポーランド・ウクライナ・バルト史 (新版, 2刷). 山川出版社.についても本学図書館に所蔵されています。
    6 柳沢 秀一. (1997). ヴァシーリ・ヴォエチコ,オクサーナ・ハンジャ,ボリス・ザハルチューク『ウクライナの国境--歴史的回想と現状』. 国際学論集, 131–135.
    7 松村 岳志. (1996). 右岸ウクライナにおける領地台帳改革(1847-48年)の歴史的意義. 社会経済史学 = Socio-Economic History / 社会経済史学会 編, 61(6), 741–768.
    8 中沢 孝之. (1994). 性急なソ連解体は「歴史の過ち」だったのでは?--独立3年目のロシア,ウクライナ,ベラルーシ,グルジアを検証. 海外事情 = Journal of World Affairs, 42(3), 82–113.

    オンラインで全文にアクセスすることができず、本学に掲載ジャーナルの所蔵もない論文については、他大学から取り寄せるなどの方法で入手できる場合があります。最寄りのキャンパスにある図書館のレファレンスカウンターにご相談ください。

    また、キーワードの入れ方についても、ただ「ウクライナ 歴史」と入力するだけではなく、百科事典や入門的図書で調べたウクライナの歴史に関係するキーワードを入れて検索するなどすれば、より多様で新しい研究成果にアクセスすることができます。

  7. ウクライナ文学について調べる
  8. 破壊された建物の写真を見せられ死者の数を教えられれば、戦争が悲惨であることを否定することはもはやできません。しかし、それ以上に、戦争がなければそこにあったはずの生活や人生を文学作品をもとに想像することは、戦争の理不尽さをよりリアルに私たちに知らせてくれます。

    また文学は、著者と読者が共有している共通認識の上に紡がれます。文学をより深く学ぶことは、著者と読者を含むコミュニティの中で共有されている共通認識を深く理解し、延いては国民性やナショナル・アイデンティティを知ることにつながります。

    蔵書を探す

    本学図書館では、小説、詩、エッセイなどについては、作家ごとの全集として刊行されている場合を除いて、原則として収集していません(※1)。ですから、文学作品についてあまり多くを大学図書館に期待することはできません。加えて、日本図書館協会の定める「日本十進分類法(※2)」では、ドイツ文学(940)、フランス文学(950)などは、それぞれ単独の分類コードが割り当てられていますが、ウクライナ文学については「989 その他のスラヴ文学」にまとめて分類されているほか、長らくソヴィエト連邦のなかの共和国だったこともあって「980 ロシア文学[ソビエト文学]」に分類されているものもあり、ウクライナ文学だけがまとまって配架されている状況ではありません。そういった状況ではありますが、次の6冊を見つけることができました。

    1 Khomenko, O., & 藤井悦子. (2005). 現代ウクライナ短編集. 群像社.
    2 Khomenko, O. (2014). ウクライナから愛をこめて. 群像社.
    3 中村唯史, 赤尾光春(1972-), & Grossman, V. S. (Vasiliĭ S. (2017). トレブリンカの地獄. ワシーリー・グロスマン前期作品集. みすず書房
    4 齋藤紘一(1943-), & Grossman, V. S. (Vasiliĭ S. (2015). システィーナの聖母. ワシーリー・グロスマン後期作品集. みすず書房.
    5 亀山郁夫(1949-), 齋藤紘一(1943-), & Grossman, V. S. (Vasiliĭ S. (2013). 万物は流転する. みすず書房.
    6 齋藤紘一(1943-), & Grossman, V. S. (Vasiliĭ S. (2012). 人生と運命. みすず書房.

    筆者の手元には、上記1の第3刷(2022.3.24)がありますが、編訳者紹介に次のように書かれています。

    藤井悦子(ふじい えつこ) 専門はウクライナ文学。一橋大学大学院博士課程修了。訳書に『シェフチェンコ詩選』(大学書林)、論文に『シェフチェンコの叙事詩《マリア》と福音書』などがある。
    オリガ・ホメンコ キエフ生まれ。東京大学大学院の地域文化研究で博士号取得。現在はキエフでBBCのスタッフをつとめるほか、フリーのジャーナリスト、通訳として活躍。

    国立国会図書館サーチで調べると、収録されている短編のタイトルと著者もわかります。

    部分タイトル 新しいストッキング / エウヘーニャ・コノネンコ 著
    部分タイトル トンボ / オレクサンドル・ジョウナ 著
    部分タイトル 暗い部屋の花たち / オレフ・ルィシェハ 著
    部分タイトル しぼりたての牛乳 / ワレンティーナ・マステロワー 著
    部分タイトル イロンカのための青リンゴ / リュボーフ・ポノマレンコ 著
    部分タイトル 未亡人 / ワシーリ・ハーボル 著
    部分タイトル ある恋の物語 / ミコラ・リャブチューク 著
    部分タイトル 天空の神秘の彼方に / カテリーナ・モートリチ 著
    部分タイトル ミシコとユルコ / ユーリイ・ヴィンニチューク 著
    部分タイトル キエフの坊ちゃん / ヴォロディーミル・ダニレンコ 著
    部分タイトル 脱出 / ワシーリ・ポルチャク 著
    部分タイトル 桜の樹の下で / コスチャンティン・モスカレーツィ 著
    部分タイトル 友の葬送 / イワン・ツィペルデューク 著
    部分タイトル 田舎っぺ / ボフダン・ジョルダク 著
    部分タイトル 十五分間の憩いのとき / ヴォロディーミル・ヤンチューク 著
    部分タイトル 彼と彼女の話 / スヴィトラーナ・ピールカロ 著

    また巻末に、オリガ・ホメンコ『国境を超えたウクライナ人』(ISBN 978-4-910100-22-7)、藤井悦子 編訳『シェフチェンコ詩集 コブザール』(ISBN 978-4-903619-90-3)、藤井悦子 訳『叙事詩マリア タラス・シェフチェンコ』と上記2の書籍紹介がありました。。

    上記3の著者略歴には以下のように記述されています。

    ウクライナ・ベルディーチェフのユダヤ人家庭に生まれる。モスクワ大学で化学を専攻。炭鉱で化学技師として働いたのち、小説を発表。独ソ戦中は従軍記者として前線から兵士に肉薄した記事を書いて全土に名を馳せる。43年、生まれ故郷の町で起きた独軍占領下のユダヤ人大虐殺により母を失う。44年、トレブリンカ絶滅収容所を取材。ホロコーストの実態を報道する。次第にナチズムとソ連の全体主義体制が本質において大差ないとの認識に達し、50年代後半から大作『人生と運命』を執筆。60年に完成。「雪どけ」期に刊行を目指すが、KGBの家宅捜索を受けて原稿は没収。「今後2~300年、発表は不可」と宣告される。「外国でもよいから出版してほしい」と遺言し、死去。齋藤紘一訳『人生と運命』全3巻(2012. 第49回日本翻訳文化賞受賞)『万物は流転する』(2013)『システィーナの聖母 ワシーリー・グロスマン後期作品集』(2015)がみすず書房より翻訳刊行された。

    訳者はロシア語学科を卒業された方と、露語露文学専攻博士課程で学ばれた方ですので、おそらく原文はロシア語で書かれているものと思われます。「ユダヤ系のロシア人作家」と分類した方が良いのかもしれませんが、ウクライナ出身ということで紹介します。

    これらの手掛りから、市販の書籍や、公立図書館の蔵書などを調べていくと、他にもウクライナ文学と呼べる小説などがあるかもしれません。他大学図書館や公立図書館の蔵書を利用したい場合は、レファレンスカウンターで相談に応じてもらえます。

    ※1 「図書館資料収集の基本方針と収書基準」参照。「非収集資料」として例示されている「フィクション単行書」がこれに該当します ※2 現在、本学では、新たに購入した図書に関しては第10版を採用して分類していますが、開架書架に配架されている過去に購入した図書の多くは第8版で分類されています。ここでの説明は第8版によります。

    事典でウクライナ文学の作家と作品を調べる

    『デジタル版 集英社世界文学大事典』の「ウクライナ文学」の説明では、次の作家や作品に言及されています。

    作家等の名前 作品・その他
    1 コトリャレフスキー イワン・ペトローヴィチ*
    Iва́н Петро́вич Котляре́вський ⁄ Ива́н Петро́вич Котляре́вский
    1769.8.29-1838.10.29
    『エネイーダ』(1798)
    オペレッタ『ナタルカ・ポルタフカ』(1838)
    2 クヴィトカ=オスノヴャネンコ フリホリイ・フェドロヴィチ*
    Григо́рiй Фе́дорович Квтка-Основ'я́ненко ⁄ Григо́рий Фёдорович Кви́тка-Основья́ненко
    1778.11.18-1843.8.8
    小説『マルーシャ』(1833)
    3 シェフチェンコ タラス・フリホロヴィチ*
    Тара́с Григо́рович Шевче́нко ⁄ Тара́с Григо́рьевич Шевче́нко
    1814.3.9-1861.3.10
    詩集『コブザーリ』(1840)
    叙事詩『ハイダマキ』(1841)
    『夢』(1844)
    4 クリーシ 歴史小説『黒評議会』(1857)
    5 コストマーロフ ニコライ・イワノヴィチ*
    Никола́й Ива́нович Костома́ров ⁄ Мико́ла Iва́нович Костома́ров
    1817.5.4-1885.4.7
    6 ドラホマーノフ
    7 ヴォフチョーク マルコ*
    Марко́ Вовчо́к
    1833.12.10-1907.7.28
    8 フランコ イワン・ヤコヴィチ*
    Iва́н Я́кович Франко́ ⁄ Ива́н Я́ковлевич Франко́
    1856.8.27-1916.5.28
    『ボリスラフは笑う』(1881)
    9 コツュビンスキー ミハイロ・ミハイロヴィチ*
    Миха́йло Миха́йлович Коцюби́нський ⁄ Михаи́л Миха́йлович Коцюби́нский
    1864.9.5-1913.4.12
    『蜃気楼(しんきろう)』(1904−10)
    『忘れられた祖先の影』(1912)
    10 ウクラインカ レーシャ
    Ле́ся Украḯнка ⁄ Ле́ся Украи́нка
    1871.2.13-1913.7.19
    劇詩『森の歌』(1912)
    11 ステファニク
    12 マルトヴィチ
    13 コビリャンスカ
    14 ヴィンニチェンコ ヴォロディーミル・キリーロヴィチ
    Володи́мир Кири́лович Винниче́нко ⁄ Влади́мир Кири́ллович Винниче́нко
    1880.7.16-1951.3.6
    15 ペトリューラ
    16 ブラキトニー, プルジニク,ペルヴォマイスキー,ゼロフ,レプキー,アントニチ,マラニューク 1917年革命から1920年代を通じたウクライナ文学の詩人
    17 ルイリスキー マクシム・タデーヨヴィチ
    Макси́м Таде́йович Ри́льський ⁄ Макси́м Фадде́евич Ры́льский
    1895.3.7-1964.7.24
    18 ティチーナ パヴロ・フリホロヴィチ
    Па́вло Григо́рович Тичи́на ⁄ Па́вло Григо́рьевич Тычи́на
    1891.1.15-1967.9.16
    19 ソシューラ ヴォロディーミル・ミコラヨヴィチ
    Володи́мир Микола́йович Сосю́ра ⁄ Влади́мир Никола́евич Сосю́ра
    1897.12.25,西暦1898.1.6-1965.1.8
    20 セメンコ ミハイロ・ワシーリオヴィチ
    Миха́йло Васи́льович Семе́нко ⁄ Михаи́л Васи́льевич Семе́нко
    1892.12.19-1937.10.24
    21 バジャン ミコラ
    Мико́ла Бажа́н
    1904.9.26-1983.11.23
    22 ヴィシニャ,ピドモヒリニー,ヤノフスキー,パンチ,フヴィリョヴィー,コシンカ,サムチューク 1917年革命から1920年代を通じたウクライナ文学の散文作家
    23 コルネイチューク アレクサンドル・エヴドキモヴィチ
    Олекса́ндр Євдоки́мович Корнiйчу́к ⁄ Алекса́ндр Евдоки́мович Корнейчу́к
    1905.5.12-1972.5.14
    24 ステリマフ ミハイロ・パナーソヴィチ
    Миха́йло Пана́сович Сте́льмах ⁄ Михаи́л Афана́сьевич Сте́льмах
    1912.5.11-1983.9.27
    25 ホンチャール オレシ〔オレクサンドル〕・テレンチヨヴィチ
    Оле́сь〔Олекса́ндр〕 Тере́нтiйович Гонча́р ⁄ Оле́сь〔Алекса́ндр〕 Тере́нтьевич Гонча́р
    1918.4.3-
    26 チュチュンニク,ルデンコ,シェフチューク 第二次大戦後の散文作家
    27 コステンコ,コローチチ,ドラチ 第二次大戦後の詩人
    28 パヴリチコ 『二つの色』(1965)

    "ウクライナ文学", デジタル版 集英社世界文学大事典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-04-04) *印の作家は個別の項目が立てられて、さらに詳しい説明が読める。個別に項目が立てられている作家については、作家名は個別項目の標目に拠った。

    ただ、残念ながら、邦訳されたものはそれほど多くはなさそうです。。

    国立国会図書館サーチで探す

    国立国会図書館は、納本制度によって、国内で刊行された図書や雑誌を原則すべて収集しています。「国立国会図書館サーチ」は、国立国会図書館の膨大な蔵書を検索できるシステムです。雑誌については、掲載されている記事の書誌情報も収録していますので、文芸雑誌の中にウクライナ文学の邦訳が掲載されているというようなケースでも探し出すことができます。

    簡易検索画面で単純に「ウクライナ」と入力して検索すると8,221件がヒットします(2022年4月6日現在。以下同じ)。左側のファセットで絞り込み条件を指定できますので、資料種別を「本」、分類を「9.文学」に絞り込むと116件に絞り込めました。残念ながら、ヒットしたものがすべてウクライナ文学ではなく、また、ウクライナ文学がすべてヒットしているわけでもありません。検索結果を根気よく探していくと、中澤英彦, インナ・ガジェンコ 編訳『ウクライナの心 : ウクライーンカの詩劇 スコヴォロダの寓話』という資料の著者標目に「日本ウクライナ文化交流協会」、シリーズ名に「ウクライナ・ブックレット ; 4」と入力されているのを見つけました。国立国会図書館サーチでは、著者標目やシリーズ名から、同じ著者標目のついている資料や、同じシリーズの資料を探すことができます。

    また、前述の事典で調べた作家の作品を検索をしたのですが、これはなかなか骨の折れる作業でした。けっして網羅的ではありませんが、以下の書籍等が日本国内で出版されていることらしいことまではわかりました。

    1 イワン・セミョノヴィチ・コズロフスキー/テノール,ヨーゼフ・シュミット/テノール. 『BELCANTO : The Tenors of the 78 Era 5 KOZLOVSKY・SCHMIDT』 (視聴覚資料)
    2 Shevchenko,Taras ; 渋谷定輔『シェフチェンコ 詩集 わたし が 死んだら』
    3 エンツォ・カターニア/著,廣江 章/訳『シェフチェンコ : ACミランと共に』
    4 世界詩人全集 ; 第3巻『後期ロマン派詩集』
    部分タイトル ツルゲ-ネフ.ポロンスキィ.フェ-ト.シェフチェンコ.ネクラ-ソフ.ニキ-チン
    5 シェフチェンコ 著 ; 渋谷定輔 編 ; シェフチェンコ,タラス『詩集わたしが死んだら』
    6 渋谷定輔 訳『わたしが死んだら : シェフチェンコ詩集』
    7 渋谷定輔, 村井隆之 編訳『シェフチェンコ詩集』
    8 藤井悦子 訳注『シェフチェンコ詩選』
    9 タラス・シェフチェンコ 著,藤井悦子 訳『マリア : 叙事詩』
    10 タラス・シェフチェンコ 著,藤井悦子 編訳『コブザール = Кобзар : シェフチェンコ詩集』
    11 『世界名詩集大成 第12 (ロシア篇)』(コブザーリ(全) シェフチェンコ 小松勝助訳 / 197 (0104.jp2))
    12 原田 義也 訳『レーシャ・ウクラインカ『カタコンベにて』』 ロシア・東欧研究 / 大阪外国語大学ヨーロッパ1講座 編 vol.8 pp.113~154
    13 詩人会議 編. 『詩人会議 3(7)』(海外の詩 兵隊のバラード(ウクライナ) / ミコラ・バジャン ; 除村ヤエ / p56~59 (0029.jp2))
    14 ソヴェート文学研究会 編. 『ソヴェート文学 (75)』 (詩人の全能の言葉〔含 Микола Бажан:詩五篇〕 / ワレ-リイ デメンチエフ ; 村井隆之 / p93 (0051.jp2)<2253276>)
    15 ソヴェート文学研究会 編. 『ソヴェート文学 (80)』 (一五〇〇年の歴史に輝く都市キ-エフ / Олесь Гончар ; 石黒寛 / p113 (0061.jp2)<2655871>)
    16 白水社『現代戯曲選集 3 3』 (プラトン・クレチェット(A.コルネイチューク著 井上満訳))
    17 宮沢俊一 訳,コルネイチュ-ク,A 著『マカ-ル・ドゥブラ-ヴァ 三幕』
    18 ソヴェト研究者協会文学部会 編『ロシヤ文学研究 (1)』(プラトン・クレチェット(戯曲) / コルネイチユーク ; 井上滿 / p181~232 (0092.jp2))
    19 ステリマフ 著,原卓也 訳『人の血は水ならず』

    このうち『シェフチェンコ詩集』、世界詩人全集 ; 第3巻『後期ロマン派詩集』、『世界名詩集大成 第12 (ロシア篇)』と『ソヴェート文学』については本学図書館にも蔵書がありました。やはり「ロシア文学」「ソヴィエト文学」に埋もれてしまって、なかなか見つけ出すことはできないようです。

    日本におけるウクライナ文学研究を調べる

    国立情報学研究所が提供するCiNii Researchでは、文献だけでなく、外部連携機関、機関リポジトリ等の研究データ、科学研究費助成事業の研究プロジェクト情報などを含めて、入力されたキーワードから横断検索することができます。日本国内におけるさまざまな研究事業を調べるためのポータルサイトと言えます。2022年4月現在、「ウクライナ文学」と入力して検索すると、重複していると思われるものを除く5件の文献と1件の研究プロジェクト、さらにこの1件の研究プロジェクトから5件の関連論文が見つかります。このうち、次の2件は、すぐに全文にアクセスすることができます。

    1 レーシャ・ウクラインカ再読 : ウクライナ文学におけるナショナル・アイデンティティ』原田, 義也. スラヴ研究 = Slavic studies Volume: 54 (2007) ISSN: 0562-6579
    2 ウクライナ文学史におけるゴーゴリ -『ソローチンツィの定期市』のエピグラフを手掛かりに-』伊東, 一郎 早稲田大学大学院文学研究科紀要. 第2分冊, 英文学フランス文学ドイツ文学ロシヤ文学中国文学 50 六七-八四, 2004

    全文がインターネット上で公開されていないものや、掲載されたジャーナルが本学に所蔵されていない場合でも、他大学から取り寄せるなどの方法でその論文にアクセスできることがあります。最寄りのキャンパスにある図書館のレファレンスカウンターにご相談ください。

    さらにCiNii Researchでは、研究プロジェクトに参加している研究者が参加している他のプロジェクトや、その研究者の書いた他の論文を探すなど、ひとつのキーワードから関連する事柄を次々に検索していくことが可能です。

    また、キーワードの入れ方についても、ただ「ウクライナ文学」と入力するのではなく、百科事典で調べたウクライナの文学者の名前を入れて検索するなどすれば、より多様で新しい研究成果にアクセスすることができることでしょう。

  9. むすび
  10. 新聞報道では「ウクライナの中でロシア人の多い地域」といった表現を見かけます。百科事典の説明でも、「ウクライナの主要民族は、ウクライナ人77.8%、ロシア人17.3%、続いてベラルーシ人、モルドバ人、クリミア・タタール人、ユダヤ人などである(2001)」(※1)と説明されていますが、この「ウクライナ人」「ロシア人」とは誰のことなのでしょうか。このページでは、それを知る手掛かりとして、ウクライナの歴史とウクライナ文学を取り上げました。「民族」とは、国語辞典の定義では「同じ文化を共有し、生活様態を一にする人間集団。起源・文化的伝統・歴史をともにすると信ずる」(※2)人々とされています。ウクライナ人とロシア人では何が共通で何が違うのでしょう。そしてその違いがなぜ戦争に帰結するのでしょうか。この記事を書いている筆者は十分に理解していません。

    この「民族」という概念に関わって、一連の報道の中で使われる「ナショナリズム」「民族主義者」といった言葉に、この記事を読まれているみなさんはどのような印象を持たれるでしょうか。「NATO(北大西洋条約機構)主要国はウクライナの民族主義者とネオナチを支援している」(※3)ことを理由に侵攻を正当化する言説は、民族主義をネガティブなものとして捉える文脈のうえに成り立っています。これに対して「支援していない」と反論するのか、「彼らは民族主義者ではない」と反論するのか、「民族主義はネガティブなものではない」と反論するのか、あるいか首肯するのか。図書館には「民族主義」について学ぶためのリソースも数知れずありますし、それ自体が論文がいくつもかける大きなテーマでもあります。

    現に多くの命が奪われ、多くの人が危険に怯え逃げ惑う中で、「本を読む」などということは悠長に思われるかもしれませんが、しかし本を読むことによって解決が遠退くことはありません。第二次世界大戦で多くの学生を戦場に送り込んだ本学は、戦後「二度とペンを銃に持ちかえない」という誓いを立てました。そのペンという武器に知識という弾薬を込めるため、図書館がお役に立てることを願っています。

    ※1 "ウクライナ", 日本大百科全書(ニッポニカ), JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-04-06)
    ※2 "みん‐ぞく【民族】", 日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com , (参照 2022-03-31)
    ※3 朝日新聞 2022年3月6日 朝刊2面「(ウクライナ侵攻)「虚構」かざし、進むロシア 譲らないプーチン氏、対話も望み薄」